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私が「相続」や「承継」という分野に携わるようになり、改めて自分自身がいかに恵まれ、幸せな継承と相続を経験することができたのかに気づかされました。
今から15年前、私の父は末期の肝臓がんと診断され、余命半年を宣告されました。父は自分が動けなくなった後の家族の未来を何よりも心配していました。病気がちな妹、まだ高校生だった弟、そして初孫である私の長男の未来を案じながら、闘病生活を続けていました。
半年の余命宣告を超えたある初夏、私は第二子を妊娠。父に孫を会わせるために、毎月片道3時間かけて息子を連れて実家へ通いました。その翌年の1月、弟は成人式を迎えることができ、その成人式が終わり、ある寒い寒い雪の夜、父危篤の知らせが入りました。「朝になったら父に会いに行こう」と決め、眠りにつこうとしたところ、予定日より2週間早く破水。私は次男を出産しました。その知らせを受けた父は奇跡的に意識を取り戻し、看護師に「孫が生まれた!」と喜んで話していたそうです。その2日後、まるで次男の誕生を見届けて安心したかのように、父は静かに息を引き取りました。
父が亡くなった2日後は、父と母の29回目の結婚記念日でした。母に宛てた手紙には、父自らの手で書かれた「感謝」という二文字が記されていました。父の行動や遺した言葉は、家族への深い愛情を伝える「承継」そのものでした。父は、家族の未来を案じながらも、自分の死を単なる終わりとは捉えていませんでした。私は今、こう思います――死は悲しい出来事であると同時に、親ができる最後の子どもへの教育であると。父が私たち家族に遺したのは、単なる財産ではなく、想いを未来へつなぐという「教え」でした。そして、父が立ち上げたこの会社を私が引き継ぐことで、その教えを実践し続けています。